玉ねぎ

じぶんのこと

玉ねぎを切る度、思い出す人がいる。

私はその人のことが、嫌いだった。
その人もたぶん、私のことが嫌いだった。

味噌汁をつくるとき、
彼女は玉ねぎを、繊維を断ち切るようにして、刻んだ。

私は、繊維にそって、刻んだ。
彼女の味噌汁の玉ねぎは、しゃくしゃくして歯触りが心地よかった。
私の味噌汁の玉ねぎは、柔らかくて出汁がよくしみていた。

彼女は後からやってきて、私がそれまで大事にしていたことを、否定した。
彼女はルールを大事にする人で、私は自由でいたかった。

私はその場所を去った。
彼女は手紙をくれたけど、どういう気持ちで書いたのか、私にはわからなかった。


味噌汁を、つくる。

私はときどき、玉ねぎを、繊維を断つようにして、切る。
彼女のことを、思い出す。

しゃくしゃくした歯触りの玉ねぎは、おいしい。
嫌いだったなぁ、と思いながら、味噌汁をすする。

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