ねずみを埋めた。
庭に。
名前を知りもしなかった、マルティン・ブーバーの本を急に読みたくなって、
図書館へ行こうと
猛暑のなか、飛び出した。
3分ほど歩いて、これは無謀だったかもしれないと思い始める。
あちちになったアスファルトの端に、何かが落ちていた。
アスファルトみたいな色。でも、柔らかそうだった。
ねずみだった。
小さな黒目を細く見開いたまま、死んでいた。
「細菌やウイルスをたくさんもっているので、素手でさわってはいけません」とどこかで読んだ一文を思い出しながら、なにか包むものはあったかとバッグを探す。
ハンカチ…いや、この後使うしな。
エコバッグ…まあ、洗えば大丈夫か。
汗拭きシート…あ、これいいじゃないか。
汗拭きシートを一枚取り出し、ねずみを拾い上げる。
ほんとはたぶん、燃えるゴミとして出さなきゃいけないんだろうけど、なんか忍びなくて、この出不精の私が、外出したその日に限って出会ってしまったというのもどこか引っかかって、
ねずみのためというより私のために、
庭に埋めることにした。
真夏の土はからからに乾いていて、シャベルでは深く掘れなかった。
カラスや猫に荒らされたら困る、と思って、少しだけ土を高めに盛って、こぶしふたつ分くらいの、石をのせた。
そして、幼稚園ぐらいのとき、雀をこうして埋めたことがあったなと思い出す。
あれもきっと、燃えるゴミに出さなきゃいけなかったんだろうな。
ねずみだから問題なかったけど、ハクビシンでも死んでいたら、さすがに埋められないしな。
じゃあやっぱり、埋めないほうがよかったのかな。ねずみは土葬して、ハクビシンは燃えるゴミ?
死後のトリアージ、みたいで嫌だな。
汗拭きシートを捨てて、手をいつもより丁寧に洗う。
体じゅうから、汗が噴き出していた。
