歴史小説

だれかのこと

歴史小説家になりたくてさ、昔、と彼は告白した。

それぐらい、本を読むのは好きだしたくさん読んできた、ということだった。

でも、と続ける。
エッセイとか自己啓発本は、全然興味ないしむしろ嫌いなんだよね。お前の話なんて興味ないし、それはお前の人生の結果で、俺の人生とは違うし。

そうなんですね。
へえ。

そう答えたものの何かが引っかかって、
実のところ2日間くらい、このことを考えていた。

歴史小説だって、誰かの人生物語を脚色したものであり、まったくのフィクションでないという点や、読み手の教訓になりえるという意味では、エッセイや自己啓発本と遠からず、な気がする。

ファンタジーとかいわゆる小説がめっちゃ好きで、というなら理屈はわかる。
でも彼は、「歴史」小説が好きだ、と言った。

彼にとって、どういう違いが「好き」と「嫌い」をこんなにもはっきりとわけているんだろうなあ、と考える。

2日かけて、
本人によって語られたものか否か、が境界なのかもしれない、という結論に至る。


一人の人間が「私はこう思う」といった時点にはあまり価値がなくて、周囲がそれを認めたもののほうが価値が高い、というか。

絶対的評価<相対的評価というか。

こうしてつらつら書いているくらいだから、私はエッセイ好き派、である。(自己啓発本とエッセイを一緒にくくるなよ、と思ったのは内緒だ)

どういうところが好きか、考える。

自分でない人間の考え方や、ものの見方を知れるところだ。

結局自分のこの目と脳でしか、私はこの世界を認識できないから、普段の会話レベルでは覗きえない他者のもっと深いところに踏み込むことができるのは、楽しい。

そうだなあ。彼は、具体的な他者に、そこまで興味が持てないのかもしれない。

半分くらい現実で、もう半分は幻想に在るような、そういう存在なら、自分の内側に取り込んでも安心していられる。そんな感じかもしれない。

彼のこれまでの発言や、日頃の言動から邪推する。

ま、考えすぎだな。

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